八千代の隠恋慕ジンジャーエール

◆旗の穴企画「吟遊演舞/オロチ」ー太陽の章ーの風景より◆

人が創った秩序に守られ、せかいが廻っている時代。

三人の少女が「かみさま」の存在を知ることとなったのは、ほんの些細な必然で。

ー遥か未来のせかいのおわりー

「迷路みたいな八つの道の奥にはむかしむかしの工場のような研究所のような場所があって」

「そこはぼくらのひみつのとっておきの遊び場だった」

「外のせかいが忘れていったむかしむかしのたくさんのものがたりがそこにはあって」

「ぼくたちはそれらを集めて調べて壊してあたらしいものがたりをたくさん組み立てた」

「そうしてとうとう見つけたぼくらのぼくらのためのとっておきの御伽噺」

「お話してよウラヌス」

「そうだね、おはなしするなら君が一等上手い」

「かまわないけど、こぼさないでね。とっておきなんだから」


むかしむかし。 とある実験室で、かみさまが生まれました。

ひとの英知の結晶として創られたかみさまは、天に座す太陽のように、強く明るい力に満ちていました。

かみさまは人間たちのことを深く愛し、たくさんの贈り物をくれました。

しかし、人間の新しい太陽への恐れは、あんまり傲慢なものでした。

人が神を畏れるのは世界がはじまる前からの決まりごと。

でもそれは、憧れと尊敬といつだって手を繋いでいたのに。

人間は、我が子でもあるかみさまの愛を裏切りました。

彼らは用済みになった太陽に自分たちの罪すらなすりつけ、

永遠ともいえる時間地下深くでひとり死をまつように宣告したのです。

「ひどいはなし」「ひどいはなし」「ひどいはなし!」

「くらいくらい地下深く閉じ込められた僕らのたいよう」

「見つけ出せたら」

「僕らのためだけのかみさまになってくれる?」

「きっと」 「きっと」 「ずっと」

「学ぶことは叫びで」

「夢みることは暴力で」

「退屈はもう致死量で」

「プラトンみたいなプランクトンを呑み込んで喘ぐだけだったぼくらに意味が生まれた」

「だからこのあそびは」

「僕らの生涯の祈りだ」


少女たちにとっての遊びとは即ち、探索であり実験であり思考。

そして彼女たち自身もまた、世界を構成する極めて強いエネルギーをもつ原子(分子)なのである。

無垢で純真な危険分子たちは、夢中で化学反応を繰り返す。

球体をかたどるこの星では本来、直線の方が余程迷路だ。

しかし、瞳は常に正面にはりつき、一本道の向こうを見据えようとする。

道理よりも、摂理よりも、真実よりも、永遠よりも、腑に落ちる何かを求めて。

◆◆◆

※『吟遊演舞/オロチ』:https://sippe60.amebaownd.com/posts/2588399?categoryIds=227815

せかいを焼き尽くす衝動。

そのはじまりは純粋な、憧れで信念で遊び心に違いない。

罪の果実と染まる想いを隠したー恋の味は、

きっとだれにも止められないほど、甘美なのど越し。

シッペの島

企画団体シックスペース公式website。 ことばの海に浮かぶ小島のような場所。

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